第85回 金解禁と軍縮(1)統帥権干犯問題をあおる野党 党利党略が国家を危うくした NO.2

【昭和天皇の87年】統帥権干犯問題をあおる野党 党利党略が国家を危うくした NO.2

第85回 金解禁と軍縮(1)

いわゆる統帥権干犯問題が議会で火を噴くのは、その後である。

4月25日の帝国議会。

政友会の鳩山一郎が質問に立ち、政府を激しく攻撃した。

 「政府が軍令部長の意見に反し、或は之を無視して国防計画に変更を加へたと云ふことは、洵(まこと)に大胆な措置と謂(い)はなくてはならない。

(中略)全く乱暴であると謂はなくてはならぬ」

 大日本帝国憲法下では、軍の作戦や用兵は政府から独立した統帥権(帝国憲法11条)であり、海軍軍令部長(陸軍は参謀総長)が天皇を補翼(ほよく)する(※3)。

一方、兵力量の決定は統帥権ではなく編成大権(帝国憲法12条)とされ、軍政を担う海相か陸相が輔弼(ほひつ)するのが慣例だ。

しかし、政友会などは統帥権であると拡大解釈し、倒閣運動の材料としたのである。

 政党が党利党略に走るとき、国家は危機に陥る。

以後、軍部は政治が関与できない統帥権を振りかざし、やがて政党政治は終焉する。

それを招いたのは、政党自身だったといえるだろう。

 それだけではない、かつて教えを受けた東郷平八郎も、この問題で昭和天皇と意見が離れてしまうのだ--。

(社会部編集委員 川瀬弘至 毎週土曜、日曜掲載)

 

(※1) 金を通貨価値の基準とする制度。

発行した紙幣と同額の金を中央銀行が常時保管し、金と紙幣との兌換(だかん)を保証する。

現在は、金の保有量に関係なく通貨を発行する管理通貨制をとっている

(※2) 侍従次長だった河井弥八の日記によると、軍令部長の帷幄(いあく)上奏を遅らせたことに右翼団体などが激高し、内大臣ら宮中側近を攻撃する怪文書などが出回ることとなった

(※3) 閣僚が天皇を補佐し、その責任を負う輔弼に対し、海軍トップの軍令部長や陸軍トップの参謀総長が天皇を補佐することを補翼といった

【参考・引用文献】

○牧野伸顕記、伊藤隆ほか編「牧野伸顕日記」(中央公論社)

○宮内庁編「昭和天皇実録」16、17巻

○河井弥八記、高橋紘ほか編「昭和初期の天皇と宮中〈侍従次長河井弥八日記〉3巻」(岩波書店)

○昭和5年4月26日の官報号外「第五十八回帝国議会 衆議院議事速記録第三号」

(国立国会図書館所蔵)

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